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無機固体における化学反応の理解と新物質探索・機能開拓

 

酸化物や合金などの無機固体では、無数の原子あるいはイオンが凝集することで、電子伝導・イオン伝導・誘電性・磁性・超伝導といった多様な機能があらわれます。それら機能を引き出し、向上させるためには、どの原子・イオン種をどのように並べるかが非常に重要となります。

しかし、無機固体において原子・イオンを狙った位置(サイト)に置くことは簡単ではありません。様々な化学反応によって官能基・配位子を高い自由度で操ることができる有機・錯体分子とは対照的に、1000ºC前後の高温焼成によって合成される多くのセラミックスでは、結晶構造と組成に限りがあります。今日において新物質・新材料を発見するためには、何らかの工夫が必要です。

そこで私は、低温トポケミカル反応・高圧合成・電気化学的インターカレーションといった合成手法を駆使することで、「自由度の高い無機固体合成」に挑戦しています。特に結晶骨格を担うアニオン種の複合化(複合アニオン化)に注力し、単純な酸化物や窒化物では得られない配位環境、さらにはそれを活かした機能の創出を目指しています。夢は局所配位と周期構造を自在にデザインする精密無機合成、すなわち「ほしいものをつくる固体化学」の実現です。

研究内容(@分子研小林G:2018~)

  • 固体電解質を用いたヒドリドインターカレーション反応

ヒドリドは強い還元性や1s軌道のみからなる電子配置など、他のアニオンとは一線を画す特徴をもちます。固体電解質を用いた電気化学的インターカレーション反応によって、ヒドリドを含む新奇準安定相の創出を目指しています。

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  • 複合アニオンを活かした非酸化物系イオン導電体の探索

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分極率の大きなアニオンからなるソフトな結晶格子に着目し、イオン導電体を中心とした物質探索をおこなっています。

Sci. Adv. 2021.

  • ヒドリド導電性酸水素化物の開発

層状ペロブスカイト構造において、アニオンのサイト選択性に着目した物質探索をおこなっています。ヒドリドが岩塩層を選択的に占める新物質の合成、および構造相転移に伴う中温域での高速ヒドリド導電体の開発に成功しました。

Inorg. Chem. 2019.

Chem. Commun. 2020.

Nat. Mater. 2022.

岩塩層.jpg

過去の研究成果(@京大陰山研:~2018)

  • ペロブスカイトにおけるヒドリドのアニオン交換反応

labile.jpg

酸水素化物中のヒドリドの高い lability (交換能)に着目し、従来法では得られなかった強誘電性酸窒化物の合成に成功しました 。また、CaH2を用いたヒドリド/酸素交換反応において、速度因子の重要性を明らかにしました。

Nat. Chem. 2015.

Inorg. Chem. 2017.

J. Solid State Chem. 2017.

  • ​新規酸フッ化物の合成

100 ºC以下での低温反応によって、Bi2PdO4 の孤立電子対(lone pair)から形成される一次元チャネルへのフッ化物イオン挿入に成功しました。 また、フッ素リッチな新規ペロブスカイト AgFeOF2 の高圧合成にも成功しました。

Inorg. Chem. 2018.

J. Solid. State Chem. 2020.

Bi2PdO4F.jpg
  • 複合アニオン配位が生み出すスピン異方性

高圧合成によって得た層状オキシカルコゲナイド BaFe2Se2O は、低温で"2-kモデル"と呼ばれるユニークな磁気秩序を形成します。その要素となる一軸異方的なFeのスピンの起源について、酸素とセレンからなる複合アニオン配位に着目して考察しました。

Phys. Rev. B 2016.

  • 超原子価結合における電荷密度波と超伝導

カルコゲンやニクトゲンからなるポリアニオンネットワークは、sp混成やイオン結合に比べて結合長・結合角に高い自由度が許容されます。Ba2BiSb2 が有する二次元平面において、化学結合の伸縮に由来する電荷密度波の形成とその抑制による超伝導を発見しました。

J. Phys. Soc. Jpn. 2014.

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